革靴好きの会計士Penchi

物欲の止まらない公認会計士。平成元年生まれ。令和元年結婚。現在夫婦2人暮らし。洋服、靴が好き(特にビジネスアイテムが大好物)。

仕事#4: 初心者にでもわかるM&Aの基本的なプロセス①〜登場人物編〜

 

こんにちは。

 

ちょうど1年前の2/21(金)。

妻の勤務先でコロナ感染者が出たというテレビ報道が流れ、週明けから妻の在宅勤務開始。

時を同じく、私の会社でももともとリモートワーク等も可能であったことから、ほぼ完全な在宅勤務に移行。

そして早いもので在宅勤務し始めてからちょうど一年が経とうとしています。

 

大切な革靴たち。

今日に至るまで、全く履いてあげることが出来ていないのでどうしようかと悩む今日この頃です...。

 

さて、早速本題ですが、

本日から下記の通りに5回に分けて、M&Aの実務に携わられたことがない方にも、

M&Aの基本的なプロセスを知って頂けるような記事を書いていきたいと思います。

 

  1. 登場人物編
  2. M&Aのタイプ分類
  3. Buy-side/Sell-sideの各業務プロセス
  4. Buy-sideのタイプ分類
  5. 1回目から4回目までの専門用語総まとめ

 

本日は登場人物編です。

よろしくお願いします。

 

まず最初の登場人物。それは『売り手』です。

売り手と一口に言っても、売り手と対象会社は同じではありせん。

何を言っているかというと、M&Aは大抵の場合は、『A社の子会社であるa社を売却するケース』と『B社内にある複数事業の内、不採算事業であるb事業のみを切り出して売却するケース』とに大別できます。

そして、上記でいうA社とB社のことを『売り手/セラー/Sell-side』などと呼び、a社やb事業のことを『対象会社/対象事業/ターゲット』などと呼びます。

 

次に当然出てくる登場人物は『買い手/Buyer/Buy-side』です。

売り手がいても、買い手がいないとM&Aは始まりません。

但し、買い手については、1点留意が必要です。

特殊なケースを除き、買い手は最終的には一社になりますが、途中までは『買い手候補者』として複数の会社が存在していることが多いです。

これは、M&Aのタイプが相対取引かオークションかによって分かれてくることですが、ここの詳細は次回のテーマ『M&Aのタイプ分類』で詳細をご説明したいと思います。

なので、ここでは、買い手については最終的には一社だか、途中までは複数の買い手候補者がいるんだな程度のご理解で構いません。

 

ここまでで、M&Aの主役である『売り手』『ターゲット』『買い手(候補者)』の3プレイヤーが登場しました。

 

次に登場するのは、銀行などの金融機関』です。

M&Aをする際は大きな案件では何千億円という金額で取引されるため、

必ずと言ってもいいほど買い手は銀行からお金を借ります。

そうなかなか自己資金だけでM&Aできる会社はいません(人間で例えると自分の貯金だけでマイホームを買うようなもの..)。

お金を貸してくれる金融機関のことをM&Aの世界では『レンダー』と呼んでいます。

売り手との交渉が上手くいっても、このレンダーから資金を調達できなかったら元も子もありません。

そのため、レンダーは非常な重要な登場人物。彼らには事細かく、M&Aをする目的やターゲット会社の将来性などを説明してあげ、気持ちよくお金を貸してくれるように交渉していくことが大事になります。

 

では、次に買い手側に付く各種アドバイザー(専門家)の紹介です。

M&Aでは、本当にこのターゲットを買収しても良いか?将来性はあるか?実は過去に違法な取引をしており、今後裁判で訴えられる可能性はないか?環境汚染問題や、脱税などのリスクはないか?など、非常に様々な角度からターゲットを調査して、買うか買わないか、買うならいくらまでなら出せるかを慎重に考えていく必要があります。

このとき、買い手企業が、財務、税務、ビジネス、法律、環境、労務問題など各種分野について専門的なスキルを有していれば良いのですが、自社内でそこまでの人材を用意できないのが一般的です。

そこで出てくるのが各種分野についての専門家であるアドバイザーです。

分かりやすいのは、財務では公認会計士、税務では税理士、法律では弁護士、労務問題では社労士、ビジネス面では戦略コンサルなどです。

こういったアドバイザーが調査(デューデリジェンスといいます)をして、その調査結果をもとに買い手は慎重に検討を進めていくことになります。

デューデリジェンスについてはコチラでも紹介していますので、ご覧下さい↓↓↓

 

但し、いくら慎重にといってもM&Aは鮮度が大事で、大型案件になればなるほど、調査期間は短く、早いものでは1ヶ月、長くても2,3ヶ月以内に調査期間は終了させられます。

これは、調査期間が長引くほど情報漏洩リスクが高まることが一因となります。

従って、慎重に判断はしたいものの、ゆっくりと時間を取れるわけではないので、いざ案件がスタートすると、かなりバタバタと毎日が過ぎて行きます。

 

買い手企業自体は社内での説明であったり、レンダーからお金を借りるための交渉であったりと多忙を極めます。

そのような中で各種アドバイザーから情報を集めたり、関係者が20-30名以上となるような会議の日程調整をしたり、プロジェクトをマネジメントするのは結構厳しかったりします。

そこで出てくる登場人物が、フィナンシャルアドバイザー、通称FA(エフ・エー)です。

このFAは、投資銀行であったり、証券会社が就任することが多く、M&A戦略の立案から売り手との交渉代理であったり、各種アドバイザーとの橋渡しやプロジェクト管理全般を担います。

 

このように、買い手は、FAを介して各種アドバイザーとコミュニケーションを取りながらM&Aの実際要否を検討していきます。

 

一方で売り手側を見ると、

買い手側の各種アドバイザーから膨大な量の質問(QAプロセスと呼ばれています)が、飛んできます。

数にして200〜1,000個といった数です。

そして、買い手候補が複数社いるような場合は、200〜1,000個×何社といった感じで、質問数がとんでもない量に達します。

これらを捌いていくのはなかなか骨が折れるため、売り手側も各分野の専門家をアドバイザーとして付け、買い手側からのQAに代理で対応していってもらうようにすることが多いです。

売り手側の各アドバイザーは、QAが来てから調査していたのでは遅いため、一般的には買い手側の調査が始まる何ヶ月も前に一度調査を行い、買い手から質問されるであろう項目を想定して準備しているのが通常です。

そして、また、売り手企業も各種アドバイザーとのコミュニケーションや買い手側とのコミュニケーションなど、複雑になるため、FAを付けるケースも多いです。

但し相対取引の場合は売り手も買い手もFAを付けないことが一般的ですが、ここはまた次回。

 

従って、通常の売り手と買い手のコミュニケーションはそれぞれのFA同士で行います。

 

以上で主要な登場人物は揃いましたが、コチラでまとめさせて頂きます。

 

  • 売り手/セラー/Sell-side
  • 対象会社/対象事業/ターゲット
  • 買い手/Buyer/Buy-sIde
  • 銀行/レンダー
  • 買い手側のフィナンシャルアドバイザー/FA(投資銀行や証券会社)
  • 買い手側の各種アドバイザー(会計士、弁護士、戦略コンサルなど)
  • 売り手側のFAおよび各種アドバイザー

 

 こんな感じで登場人物は多めです。

日々、色んな会社の色んな方とミーティングをしながら情報をアップデートしていくので、

非常に忙しいですが、毎回とても勉強になります。


本日は大変長くなってしまいましたが、以上でM&Aについての登場人物の紹介を終わります。


次回は『M&Aのタイプ分類』について書きたいと思います。


ではでは最後まで有難うございました。


Penchi