こんにちは。
本日は革靴ではありません。
少し趣向を変えて、定期的に『簿記』や『財務会計論』その他、公認会計士の仕事である会計監査やM&Aの実務に関して、紹介をしていけるような記事を書いていきたいと思います。
それにあたり初回は、改めての自己紹介と少し細かめな経歴紹介をさせて頂きます。
- 1989年生まれ
- 2010年大学3年生のときに公認会計士試験に合格。2012/3月、大学卒業。
- 2012/4月〜2014/5月末: 税理士法人で財務・税務デューデリジェンス2年。
- 2014/6月〜2017/8月末: 大手監査法人で会計監査3年。
- 2017/9月〜現在: M&Aアドバイザリー業務
- 趣味: 革靴。
もともと唯一の趣味、革靴の備忘録のために書き始めたブログでしたが、
コロナウィルスの関係で、2020年2月末から在宅勤務が始まり、本日現在までに正式に出社した回数は1回...。
革靴の着用回数も激減し、この1年でつまり、1回しか履いていません...。
そのため、革靴中心ではなく、少し仕事面での知識や経験をブログに書いていけたらいいなと思いました。
以下、過去の職歴でどんなことをやってきたか、ハイライト的な、思い出の記載。
《監査法人時代》
2012/3月に大学卒業後、都内の税理士法人に入社。その後2年の経験を経て、2014/6月、同じく都内の監査法人に転職。
監査法人では、石油の大手元売の会計監査チームにアサインされていました。
振り返れば、業界が波瀾万丈な時代にちょうど監査チームに入っていたため、かなり苦労しました。
当時、2014/11月頃までは、1バレル(石油の取引単位)100ドル程度で推移していた原油マーケットが、2014/12月に突如1バレル50ドルを下回る水準まで大暴落した時期でした。
この大暴落はなぜ起きたのか。
まず、当時、米国のシェールガス(簡単に言うとサウジアラビア等の中東を中心とした中東産油国発の原油に代わるアメリカ産の新エネルギー)の台頭や、中国経済をはじめとした世界経済の先行き不透明な状況から、原油の需要が低下することが予想されていました。
そのため、『石油需要の低下に伴い、石油の生産量自体も減らされるのだろう』とマーケットでは予想されていましたが、
OPEC(簡単に言うと、中東等の産油国を中心とした石油協会とイメージしてもらえればいいと思います)の会議で、石油の生産量は減らさないという決議がなされました。
低下する需要量に対して、生産量は減されないという方針決定が出されたため、市場で石油が売れ残ってしまう(供給過多)ことが想像されました。
そして、余ってしまう=値崩れが起きるということをマーケットが予想し、2014/12月に原油価格が大幅に下落してしまったのです。
2015/3月期の大手石油元売会社の決算では、軒並み1,000億円レベルの水準で在庫評価損が計上されていました(マーケット価格が100ドル時代に仕入れていた在庫も、期末時点でマーケット価格が50ドルを下回ったため、在庫からも大幅に損失が計上)。
ENEOS HD(旧JX)の当時のニュースリリース
https://www.hd.eneos.co.jp/ir/irrelease/jx/pdf/20150204_01_01_1010024.pdf
出光興産の当時のニュースリリース
https://ssl4.eir-parts.net/doc/5019/tdnet/1211063/00.pdf
ゆっくりとした年末を過ごせるかと思いきや、バタバタと年末年始にクライアントとのミーティングを繰り返した記憶があります..。
当時はとても大変でした。
特にもともと、石油に限らず、エネルギー業界全体では2010年から施工されていたエネルギー供給構造高度化法という施策のもと、業界再編が活発化している中で、その石油価格の大暴落でしたので、大混乱..。
このエネルギー供給構造高度化法とは、簡単に言うと、
石油や石炭などの資源を消費することで得られるエネルギーではなく、太陽光発電や風力発電など、自然の力で発電し得られるエネルギー(クリーンエネルギー)の使用比率を高めていきましょうという法律です。
これは、そもそも日本が資源大国ではなく、石油や石炭に至るまで、消費エネルギーのほぼ全てを海外から輸入しており、その輸入価格も乱高下するため、国内での安定的な供給を実現するために、石油・石炭の輸入に頼らない太陽光や風力発電などで自分たちでエネルギーを生産して、そういったエネルギーの使用比率をあげていきたいという背景がありました。
この結果、各石油元売(JX、出光石油、コスモ石油、東燃ゼネラル石油、昭和シェル石油など)は、国から石油生産量を一定数まで減らすようお達しを受けていました。これがエネルギー供給構造高度化法です。
会計・経営学的な話にはなりますが、生産量が減ってしまうと、『規模の経済』が得られなくなってしまうので、利益を出すのが難しくなってしまいます。
この『規模の経済』とは、ボリュームメリットとも言われており、簡単に言うと、1,000kg生産できるだけの設備を持っていても400kgしか生産しなかった場合、差分の600kg分の生産能力を無駄にしており、それが損となっているイメージです。稼働できていないこの600kg分の生産能力からもコストが発生しているため(例えば減価償却費や固定資産税、メンテナンス費など)。これを正確に語ろうとすると変動費、固定費というコストの概念が絡んでくるため、これはまた別の機会に。
話を戻すと、生産数を一定程度まで減らすように国からお達しを受けた石油元売各社は、当時大手5社と言われていましたが、大手各社で規模の経済が得られなくなり、損失が膨らむことが想定されました。
イメージ、日本全体で年間100トンの石油しか生産してはいけません。と言われてしまうと、大手5社それぞれで作れる石油は単純に頭割りすると20トンずつ。この20トンでは各社、規模の経済が得られず十分な利益が出せないので、合併して、例えば大手5社が、2社になれば、各社で50トンずつ生産でき、結果規模の経済から利益も得られる。という背景もあり、当時大手5社と呼ばれていた石油元売は、合併をして、大手3社の体制になりました(JXと東燃ゼネラル、出光石油と昭和シェル石油、コスモ石油)。
こういった合併などを総称して会計的には組織再編と言いますが、この組織再編が起こるときは会計処理も大変複雑になるので、経理部の方も会計監査チームの我々もバタバタ。
非常に大変な経験でしたが、それをきっかけにM&Aの実務に強い魅力を感じ、いまのM&A仲介業へ方向転換していきました。
貴重な経験です。
《税理士法人》
次に順序は逆転しますが、最初のキャリアである税理士法人です。
大学卒業が2012/3月だったので、ちょうど東日本大震災の翌年。このとき、東北地方の中小企業は、被害も大きく非常に財政状態も傷ついていました。
そのため、国や銀行からの金融支援策も色々ありましたが、その中にデッド・エクイティ・スワップを積極的に取り組んでいくという施策がありました。このデッド・エクイティ・スワップをするにあたり、金融機関と交渉する際のアドバイザーとして業務に従事していました。
このデッド・エクイティ・スワップとは、簡単に言うと、銀行が企業に貸している貸付金、企業からすると、借金(デッド)ですが、この借金を出資(エクイティ)に切り替えて(スワップ)もらうという手法になります。
皆さん、株式投資はご存知ですよね。株を買ってその企業に投資し、株価が上がればバンザイ。下がれば悲しいアレです。
この株式投資のことを出資とも言いますが、この株式投資したお金は、貸付金ではなく出資なので、返済されることはありません。
株を売却するか配当で収入を得ていく形になるので、株価が下がると悲しいし、あがると株を売却したときに当初の出資金額以上で売れるのでバンザイということに。
これと同じように、銀行がもとから貸していたお金を、出資に切り替えてもらうことで、企業にとっては返済義務のある借金1億円が、返済義務がない出資金に切り替わるということで、返済の負担や利息の支払いがなくなるというメリットがあります。
借金返済や利息支払いの負担がなくなるので、震災被害を受けた企業にとっては大変助かる支援策となります。
では、デッド・エクイティ・スワップをしてあげた銀行にはメリットがあるのか??という話ですが、
銀行側にとっては、確かに貸し付けていたお金を返してもらえなくなったことは悲しいことです。ですが、では返してもらえるまで、督促し続ければ良かったのでしょうか??と言われても、それは必ずしもYESではありません。
なぜなら、返せと言い続けたところで、震災で傷付いた中小企業に体力はなく、返す気がないのではなく返すためのお金が本当にないのです。従って、頑張ったところで返せないものは返せず、しまいには倒産してしまいます。
倒産した場合、その会社が持っていた土地やら工場設備やらを担保にとっていた銀行が、それらの資産を差し押さえて売却しお金に変えます。そのお金でもって銀行はお金を回収していきますが、この担保というのはなにかと複雑で、銀行ごとに優先順位があったりと、一筋縄ではいきません。
つまり、担保にとっていた土地が1億で売れたところで、その1億全てを一つの銀行で取れるわけではないのです。
そのため、担保にとっていたからといって、銀行にとっても、お金を貸した企業が倒産されるのは困った話になるのです。
となれば、むしろ、一旦返済義務を放棄してあげて、倒産するのを防ぎ、将来業績が回復したときに配当やら株の売却などでお金を得られるように、貸し付けていたお金を出資していたお金として切り替えてあげ、貸付金を株式投資に切り替え、その企業が復活する可能性に賭けてみた方が良いのでは?という話が出てきます。
このときに、本当に業績が回復するのか?どこまで回復するのか?この会社の今現在の収益性はどんなものか?といったビジネス面や、会計面でしっかりとその会社を調査し、将来予測する必要が出てきます。
この調査を、当時税理士法人勤務時代には担当しておりました。
俗に、この調査のことを『デューデリジェンス』と呼びます。
と、まぁこんな感じで、監査法人と税理士法人では業務に従事していました。
詳細はまた別の機会に。
脈絡のない文章ですが、また次会は今現在の業務について少し語り、本格的に簿記ブログを始めたいと思います。
ではでは、本日も最後までありがとうございました。
Penchi