こんにちは。
先日から、M&Aの実務に携わられたことがない方にも、基本的な流れがわかるように下記の項目に分けて記事を書き始めております。
- 登場人物編
- M&Aのタイプ分類
- Buy-side/Sell-sideの各業務プロセス
- Buy-sideのタイプ分類
- 1回目から4回目までの専門用語総まとめ
前回は『1. 登場人物編』でしたが、
本日は、2回目の『M&Aのタイプ分類』です。
前回の記事はコチラ↓↓↓合わせてご覧下さい。
M&Aのタイプ分類といっても、
合併なのか株式交換なのか、分割なのかなどという分類もありますが、今回はそういったスキームの話ではなく、『相対方式』『競売方式』という2つの切り口で分類したいと思います。
M&Aの進め方として『相対方式』『競売方式』と呼ばれる方法があります。
それぞれメリット・デメリットはありますが、一般的には相対方式は買い手有利、競売方式は売り手有利な印象です。
相対方式
こちらは、業務の中では相対(あいたい)と呼んでいますが、
売却案件に対し、買い手候補が始めから1社で、売り手と買い手候補が1対1でM&Aの交渉を進めていく方式になります。
具体例としては、A社のオーナーはこの度、自分の会社を売却しようと思っています。
このとき、日頃から親交の深かったB社にぜひ買ってもらいたいと思い、B社に買収してくれないか打診。
B社もその話に前向きであり、M&Aの交渉スタート。
こんなケースのように売り手対買い手が1対1のことを相対方式と言います。
以下、売り手側にとっての相対方式のメリット・デメリットになります。
相対方式のメリット
- 1対1の交渉が基本の形なので、関係者が少なく取引の秘匿性が保たれる。
- 相手が限定されるため、仮にM&Aの交渉が上手くいかなかったとしても、事業場の機密情報は限定された相手のみに開示されているため、今後の事業上のリスクを抑えられる。
- 双方での取引条件さえ合致すれば短時間でM&Aを完了させることができる。
相対方式のデメリット
- 買い手候補者は基本的には1社なので、売り手にとって有利な条件は引き出しにくいケースがある。
- 上記のように売り手側の価格交渉力が弱いため、思い描いていた価格で売却できない可能性がある。
- 売り手側のみでスケジュールをコントロールすることが難しい。
次に、競売方式です。
競売方式
実務上では通常、オークションやビッド(Bid)と言い方をしています。
文字通り、売り手対買い手が1対1ではなく、
買い手候補を何社か募って、各社を競わせてどこの会社に売却していくかを決めていく方式になります。
Bidとは、日本語で入札という意味の英語ですが、このことから競売方式の案件のことを、ビッド案件と呼び、
この案件に募った買い手候補者たちのことをBidder(ビッダー) と呼んでいます。
売り手は一定の情報をビッダーたちに開示し、各ビッダーはその情報を分析して、買収価額や条件などの買収案を作っていきます。
そして決められて期日になったら、売り手にその買収案を提出し、売り手は複数のビッダーたちの中から受領した買収案を見ながら、自分たちにとっても好条件なビッダーを選出し、M&Aの交渉を進めていく方式になります。
以下、売り手側にとっての競売方式のメリット・デメリットです。
競売方式のメリット
- 最適な譲渡先を選定するために、複数の買い手候補から自由に選ぶことができる。
- オークション形式のため、価格に関して、買い手候補間で競い合わせることで比較的高い金額で交渉を進めることができる。
- 売り手側でスケジュールを決定し、そのスケジュールに沿って進めていくことができる。
競売方式のデメリット
- 売り手対複数の買い手候補者で、関係者が増える分、リークされるリスクも高まり取引の秘匿性が下がる。
- 複数の買い手に事業上の機密情報を開示し買収案を作成してもらうプロセスの中で、最終的に選定された買い手以外にも機密情報を開示するため、自社の機密情報を知った人が増えてしまう。
- 1対1の交渉ではなく複数の買い手候補者との交渉から始まるため、1対1の相対方式と比較して、契約締結までに長時間を要する可能性がある。
以上のように、相対方式も競売方式もそれぞれメリット・デメリットが逆になっているような感じですね。
わりと小型の案件は相対取引、大型案件は競売方式が多い印象です。
日経新聞ではなく、テレビのニュースでも報道されるレベルのM&Aは大抵、この競売方式です。
これからニュースでM&Aに関することがあれば、こういったところに注目してウォッチしていくのも楽しいかもしれません。
ではでは本日も最後までありがとうございました。
Penchi